私がジェンダ-という言葉に初めて接したのは、4年前に受けた、社会学部の教授の授業でした。学生時代には耳にしなかった言葉ですが、最近新聞紙上でも見る様になりました。ジェンダ-に付いて説明しますと、私達が男性・女性と判断するのは生物的な性別で、そこから生まれる常識的なもので、男性は重労働にむき、女性は子育て料理と、男性と女性の役割を性別で決めていましたが、男性でも料理の上手い人がいますし、女性でもビルの施工の監督や大きなトラックの運転手もいます。ジェンダ-とは、今までの生物学的な性別でなく、社会的文化的につくられる性別の事です。生物的な性別のために、女性には教育は要らないから学校に行かなくてもいい等の性差別が今でも多くの国で行われています。「国際女性デ-」で性差別をなくそうとするのがジェンダ-です。ジェンダ-の授業で、今でも覚えている話があります。教授も現地を訪れたようですが、インドネシアの島民の、一部族の話でした。その部族の第一子は次に生まれてくる子供たちの世話をします。普通どの国でも行われている行為と思われると思いますが、第一子は将来結婚もせず、子供たちの長として一生を過ごします。部族は平均寿命も短く多産です。家事・料理とすべての家の仕事をして、家の外には出ません。第一子が男性であっても、女性であっても家族内の面倒を見ます。もちろん学校も行きません。第一子が女性として生まれた場合、弟や妹をあやしている間に、妊娠していなくても母乳が出る人もいるとの事でした。第一子が不幸にも途中で亡くなった時は第二子が同じ行動をとって、兄弟姉妹が巣立った後も、家族として両親を看取ります。本人に寿命が来た時、兄弟姉妹は両親同様の盛大な葬儀をして送り出します。その部族にとって、第一子の行動は常識で、長い間にDNAに刻み込まれたのでしょう。私達の世界が常識と思っている私には、大きなカルチャーショックでした。
毎日新聞の「性別を変える魚たち」という紙面を目にした事があります。海の生物は殆ど一夫多妻制で、一匹のオスに複数のメスが住むハ-レムを作っています。グループの最大の個体がオスです。故意的にグループからオスを取り除きます。すると次に大きなメスが性転換して、回りのメスに尾を振って近寄っていきます。実験ではオスを取り出してから約30分で性転換が行われていました。研究者の報告では最初に変化するのが脳で、ホルモンの作用で、約3週間で卵巣から精巣に変化するようです。心身ともにすっかりオスになった元メスは体も大きくなり、ハ-レムを維持して、たくさんのメスとの間に、自分の子孫を残します。性転換は子孫を残す戦術なのです。逆の実験も報告されていました。メスを全て取り除き「独身オス」のグループを人為的に作り出すと、ペアが出来たとたん小さい方がメスの行動をとり1~2ヶ月で心身ともにメスになっていきます。地球上には魚は、約3万種類いますが、性転換をする魚は400種類ほど報告されています。我々が食する身近な、シマエビ・ホタテ・カキなどが性転換する海の生物です。陸上の生物にも同じように性転換できるのか、疑問が浮かびます。魚の卵巣と精巣は比較的変化しやすいのですが、交尾をして体内受精する陸上動物は、オスとメスで体の構造が大きく異なるため、魚のように自然に性転換することはありません。
第一子が亡くなれば、第二子が家族存続のために本来の姿を変えて子供たちの中心になる部族。仲間が少ないため、たまたま出会った個体が同姓だと子孫を残せないので、片方が性転換をして子孫を残す海の中の生物。置かれた環境によって自由自在に性を変えるこれらの事柄から、我々は学ぶことが多いはずです。存続のために変わらなくてはいけないところ、変わってはいけないところ、両方を見極めることがリーダーに求められています。会社にも、サ-クルにも。(典)