我々の主食はお米です。北海道は米の産地ではないと思っていましたが、近年北海道でも美味しいお米が栽培されています。気候の変化、農業の技術進歩なのでしょうか。1粒のモミの種から、極限のモミの粒を採る競技があります。それは「バケツイネ選手権」です。2012年から毎年開催されています。1粒のモミを貰い、バケツやペットボトルでイネを栽培します。今回2015年の結果が発表されました。昨年の2月にエントリーして10月に結果を集計するものです。昨年は114名がエントリーしました。10月の集計には、ほぼ全員が収穫のモミ粒数を発表しました。バケツ部門一般の部の1位は山形県天童市の高校1年生の女性でした。1粒のモミ種から収穫したモミ粒は、何と1万5600粒でした。彼女は12年から毎年参加していましたが、1昨年は8700粒の10位でした。今回は、日当たりと風通りの良い場所を選び、夏にも暑くならない地面にバケツを置き、今までの失敗事項を見直して、1粒の種は176本もの茎になり、見事1位になりました。収穫したイネモミはペットボトル1本半になり、新聞に写真が掲載されていました。ペットボトル部門では静岡県の6歳になる女の子が、お父さん・おじいちゃんの知恵を借りて1位になりました。1粒のモミ種から、61本の茎になり、収穫のイネモミは3090粒でした。田んぼの土と黒土を混ぜ、「知恵は借りても手は借りない」全て自分で、手作りの堆肥や米ぬか発酵肥料も作り、初参加でペットボトル部門1位を射止めました。プロの部門ではバケツ栽培で1万7599粒の農業研究者が1位でした。種の根を深く伸ばし、虫に負けないイネになるように、ケイ酸を含む肥料を使い、今回初めて1位の栄冠を勝ち取りました。個人だけではありません。新潟県村上市立さんぼく南小の5年生は全員でバケツ選手権に参加し、バケツ部門で4位の6520粒でした。「クラス全員が夢中になれ、食の大切さを知った」と担任の先生のコメントが載っていました。
高校時代の友人に、「株式会社クボタ」で農業機械の開発をして、定年退職後は農業指導員として勤めている者がいます。彼はいかにモミ粒を多く収穫するかという技術を農家に出向いて指導しています。田植えの苗は18cmの正方形が一番良いようです。それより狭いと枝米(無モミ)ができ、思った収穫はできません。北朝鮮の金日成総書記時代、中国の毛沢東の時代、国家が食糧危機を迎え、両書記長は田植えのイネ苗の幅を狭くして増収穫を狙う命令を下しました。結果は何万人もの餓死者を出したのは有名な話です。国の体制にも問題があるかもしれませんが、無知な独裁者が机上の思い付きで発する言葉で、多くの国民の命を奪う結果になりました。稲作の収穫には、イネの幅、肥料は欠かせませんが、隠れた手入れも必要です。台風の地域では風で倒れないように、根をしっかり張らすために、田植え後、田んぼに足を踏み入れます。根に酸素を入れるには、水を抜き、地面をひび割れにします。より多くの収穫には、それなりの工夫が必要です。バケツ選手権の上位者もそれぞれの工夫で入賞しました。
稲作も、学力の向上も、子育ても、共通するところがあります。餓死させないためにも、知識・知恵は必要です、絶えず工夫も必要です。しっかり見て対応することも必要です。「おもてなし」はマニュアル通りの対応、「気配り」は、今、必要と思われる事を寸時に行うことです。我々に必要なのは、おもてなしではなく、気配りです。
昭和の偉人、田中角栄さんについては、多くの作家が種々の方面から書いています。エピソ-ドや角栄語録も多くあります。語録の中に、言ってよい時・悪い時。言って良い事・悪い事。言って良い人・悪い人。があります。意味深い言葉だと思います。私はその後に、言わなきゃいけない時、言わなきゃいけない事、言わなきゃいけない人、を付け加えたい。バケツ選手権、稲作、学業、子育て、1粒が1万粒になるためにも、もう1歩踏み込んで「やらなきゃいけない」(典)