週刊帝国ニュ-ス埼玉版(10月1日号)、新設立会社紹介に県内21社が掲載されていました。これらの会社は今年4月~6月までに起業されたものです。私もそうでしたが、起業家は、自分を試したい、自分なりの組織を作り上げたい、と思うものです。会社が順調に成長すると、店頭公開で証券取引所の鐘(ジャン)を鳴らしてみたい、と夢を膨らませるものです。しかし、「起業の終着駅は倒産」です。今年の8月、かつて私がロータリークラブの会員だった時にお世話になった方の会社が倒産しました。彼は、スーパーマーケット、レストラン、パチンコ店、ボウリング場と県内、都内に多くの店を持ち、順風満帆のように思われましたが、42億5千万円の負債を抱えて倒産しました。企業倒産と言えば衝撃的だったのが、97年の山一證券の倒産でした。経営者全員がTVカメラの前で涙を流しながら「社員は悪くありません。私達が悪いのです」と頭を下げていました。その通りだと思います。経営能力の無い経営陣、先を読めない経営陣、会社の夢を語れない経営陣であれば、当然の結果だと思います。社員は被害者とも言えます。倒産にも、繁栄にも原因があり、どちらもそのカギを握っているのは、経営陣です。会社を潰した経営者は惨めです。
私は前職の時、2社の債権者会議に出席したことがあります。1社は川崎市の溝ノ口に工場があった大手(上場企業)鉄工所でした。債権者会議は、新聞社、放送局が取材に来ていました。経営陣が一列に並び、弁護士が会社更生法を淡々と進行していました。もう1社は都内神田にあった工業品を扱う大きな問屋でした。従業員は50人位で、工業品メ-カから仕入れ、其々の得意先に納入していました。日本中に得意先を持ち、商品の発送をしていました。3階建てのビルの1Fは倉庫と駐車場、2Fは事務所、3Fは会議室と従業員の休憩所となっていました。問屋の倒産理由は覚えていませんが、寒い12月でした。上司に連れられて現場に着いた時には、1Fの倉庫はカラッポ。すべて債権者が持ち去った後でした。倒産の情報は早く、少しでもお金になる物は夜中でも持ち去られます。債権者会議が始まりましたが、罵声と債権者の怒りの声が渦巻いています。「お前の顔など見たくない」「土下座せよ」「頭が高い。生命保険があるだろう」とか言われ、人間扱いなどされません。役員達が全員土下座しましたが、唾を掛けられ、頭を小突かれ、目を覆いたくなる光景です。中には従業員も役員達にやるせない気持ちを吐き捨てていました。私も何度か店で見かけた従業員の一人が、役員の指を靴で踏み、タバコの火を消す様に靴をねじりました。役員の指から血が滲んでいました。おそらく従業員はパワハラを受けていたのでしょう。倒産は大きな不幸を産みます。従業員は明日からの職を失い、債権者は連鎖倒産で、次には自分が土下座の立場になる恐れがあるからです。目を覆いたい場面ばかりです。我が子にはこの姿を見せたくないでしょう。死を考えるかもしれません。倒産は、周りの人にも大きな悲劇を生みます。絶対避けなければいけません。大企業の債権者会議はマスコミと弁護士が入りますから冷静です。中小企業の債権者会議は無法状態です。私達の業界は個人経営者が多く、倒産=廃業で、殆ど債務もありません。法人となれば取引会社、株主がいます。株券は紙切れになりますから株主の怒りは壮絶なものです。
私は、同業者3社の倒産を見てきました。1社は我が社(株SCI)が債権を持っていましたが社長は夜逃げしました。残り2社の社長は自らの命を絶ちました。人間窮地に追い込まれると、債務者・債権者双方とも変貌します。だから倒産は怖いのです。経営能力は学力ではありません。持って生まれたDNA、感性、経験から吸収する知識です。目の前で倒産劇を見てきたからこそ言えるのですが、会社が黒字なら経営者は私財を貯えて、会社の危機に備えるべきです。法人税の支払いより、個人所得税で支払いなさい。私の座右の銘は「色即是空」ですが会社は壊してはなりません。影響が大き過ぎます。最後に「知恵を出せ、知恵の出ない者は汗を出せ、知恵も汗も出ない者は去れ」倒産を回避させるための経営者の語録です。(典)