我が家のガレ-ジにも毎年、雀が巣をつくります。雀は人の暮らしの中で最も身近な鳥でしょう。俳句の季語に多く用いられています。初雀は正月、寒雀は寒中、恋雀や雀の子は春、稲雀は秋、四季を通じて愛らしい姿が詠まれています。ヨ-ロッパの雀は、雄雌の姿が異なり区別がつきますが、日本の雀は殆ど同じ色形です。2羽で飛んでいれば、この時期つがいと思って良いようです。巣作りは2月頃から始まります。最初は大きめの藁などの繊維状のものから外側を作り、細かいものを運ぶようになれば、巣は完成に近づきます。4月にはペアができ、1日に1個の卵を4~8個産みます。雑食と言われていますが、繁殖期には、子育てのために虫を好んで捕獲します。繁殖期は年2回で、夏から秋にかけての繁殖期には稲も食しますが、稲の害虫を多く食べる事も知られています。中国の農村地帯で雀は食害を起こすと雀を駆除しました。しかし、害虫が大量に発生したと言う記録があり、雀は米農家にとって総合的に益鳥の面が大きいとされています。卵は約2週間でふ化します。巣の大きさと、産んだ卵の数が合わないと、成長の遅い雛鳥は外にはみ出されます。田舎に居た頃、雀の巣の下にはみ出された雛がいました。手に取り巣に戻そうとすると父は、「止めとけ」と言いました。人間の手で巣に戻すと、その雛に人間の臭いが付き、その臭いをヘビが感知し、巣に居る雛、時には親鳥まで食ってしまうそうです。子供心に無情さを感じました。雛は約2週間で巣立ちとなり、半径5km~25kmが生息地となります。集団で繁殖する習性があり、20つがい以上でいないと繁殖はしないデリケ-トな鳥です。天敵も多く、日本の雀の平均寿命は、自然条件下で1.5年と言われています。しかし、天敵のいない動物園では最長15年生きた雀がいたそうです。雀の弱点は、起きて活動している時は、お腹が満腹になっても3時間しかもたないことです。3時間すれば、食材探しをしなければなりません。鳥の中でも「モズ」はカエルや虫を小枝に刺し、食糧を貯えます。頭脳の問題ではなく習性です。雀は生きる為に短期に、危険が生じても食事をしなくては生きてゆけません。自然条件と飼育されている条件に寿命の差が出てきます。目の前の食事の量が寿命の長さと言っても過言ではありません。
経済学の前提に「人間は自己の利益を最大化させようと合理的に行動する」があります。10年先、20年先の最大の利益を生むために、今日、明日と積み上げる、が経済学です。しかし、米国の経済学者ダニエル・カ-ネル博士は、それを否定した「現在バイアス」の存在を指摘しました。経済学と心理学を合わせた論文です。人間は将来の長期的な利益と現在の短期的な利益を秤に掛けると、将来の利益を軽く、現在の利益を重く感じるという、心の動きの事を言っています。例題として、ダイエットしている女性が目の前のケ-キを我慢できない事が挙げられます。ダイエットして、将来スマ-トで好感をもたれる良い思いをするより、目の前の美味しいケ-キを食べたい。「今、美味しい思いをしたい。」また、医者から「週に何日か休肝日を取りなさい。そうでないと命に関わりますよ」と言われても、赤ちょうちんの誘いに勝てずふらっと入って行く人がいます。頭の中では、明日交通事故に遭遇するかもとか、俺は強いとか、この1杯で変わらないとか、自分に都合のよい理屈を並べ、今この1杯がどれほど旨いか!と自分に言い聞かせています。私にも経験があります。60歳になった時、年金受け取りの通知が来ました。60歳からの支給を70歳からにすれば、毎回受け取る金額が大きく違います。計算しました。77歳を過ぎれば、70歳支給が得です。しかし、75歳で寿命が来たらと考え「現在バイアス」が掛かり60歳から貰いました。80歳になった時後悔するでしょう。目先の利益を過大評価する一方で将来の利益を疎かにしてしまうことを「現在バイアス」と言います。雀は生きる為に今、食べます。しかし知恵を持った人間は、無意識に行われる思考パタ-ンであるため「現在バイアス」に陥ってしまいます。意識するだけで、何をすれば得か?何をすれば損するか?今か、待てか、「現在バイアス」を意識してみましょう。(典)