つながり

 今年も暑い夏の行事、全国高校野球選手権大会が開催されます。私の母は女子高時代、ソフトボ-ルの選手をやっていただけに、小さい頃から夏の大会はTVで見ていました。夏の甲子園は全国4,000校の中から各都道府県で選ばれた選手がト-ナメントで戦います。現在野球評論家でもあり、野球解説者で、元阪神タイガ-スで活躍した赤星憲広さんのインタビュ-文を読んだ事があります。彼の高校野球の思い出として真っ先に挙げたのが甲子園の土でした。「1993年のセンバツ大会で、初めて踏んだふかふかの黒土の感触が今でも忘れられない」と書いてありました。赤星さんは愛知県刈谷市出身ですから、センバツ大会で初めて甲子園の土に触れたのが忘れられないのでしょう。甲子園球場は、水はけの良い球場として有名ですが、元々水はけの良い球場ではありませんでした。1968年から阪神園芸株式会社が、工夫に工夫を重ねて、現在の球場が出来上がったのです。球場は黒土だけだと固まりすぎて水はけが悪く、ボ-ルがイレギュラ-バウンドします。黒土と砂を混ぜますが、砂が多いと水はけは良くてもボ-ルが弾けません。黒土と砂の割合は、黒土の産地は、砂の産地は、と試行錯誤を繰り返しながら現在の甲子園球場が出来上がっています。野球中継で試合と試合の合間にグラウンド整備をしている姿を見かけますが、グラウンド整備の専門家が、トンボを使って、目で見て手の感触で均一にしています。試合をしていると、どうしてもスパイクの跡などで不均一になります。それを長年の経験をつんだプロフェッショナルによって最高の状態にしています。2001年10月1日、阪神巨人戦で、この日をもって引退した和田豊選手が引退のセレモニーの挨拶の中で「常にいいコンディションでプレ-させて頂いた阪神園芸さんの皆さんにありがとう」と述べ、同社のグラウンド管理の高さを褒め称えました。整備のために甲子園球場では、野球等のイベントが無い1月・2月にかけて、内野フィ-ルドを耕運機で30cm程掘り起こした後、ゆっくり転圧しながら理想の「弾力のある土」に仕上げています。気象条件は毎年変わりますから、その年によって出来栄えが微妙に異なる事があります。春の選抜は時期的に雨が多いので少し砂を多めに、夏はボ-ルが見えやすい様に黒土を多めにブレンドしています。負けた高校の球児が甲子園の砂を袋に入れる光景を目にしますが、ル-ツは1937年の第23回大会で、決勝戦で敗れて準優勝に終わった、熊本工業の投手だった川上哲治選手がユニホームのポケットに入れて持ち帰ったのが最初と言われています。グラウンドの土は1度も入れ替えたことが無く、雨や風で失われた分をつぎ足しています。球場が創設された93年前の土も、太平洋戦争で焼夷弾の炎で焦げた土も、引き分け再試合を戦った先輩の汗や涙を含んだ土も混じっています。甲子園の土は、その土を整備する技術、整備員の心意気、プロ魂のすべてが、昔からつながって出来ています。

 6月21日、毎日新聞に埼玉県内の子供食堂の記事が掲載されていました。子供食堂とは、地域の大人が、子供に無料または安価で食事を提供する、民間発の取り組みです。貧困家庭や孤食の子供に食事を提供し、安心して過ごせる場所として始められました。子供の貧困率は、厚労省の発表で13.9%、国際的には高い水準で、7人に1人が生活困窮家庭の子供です。子供食堂を運営するのは貧困対策に取り組む団体で、埼玉県内にも6ヶ所の子供食堂があり、私の住んでいる地域にもあります。確か子供50円、大人100円でお腹いっぱいの食事がとれます。私も友人と家庭菜園で採れた野菜を差し入れています。子供食堂は命をつなぐ場所です。

 夏の野菜キュウリは、受粉しなくても実はなります。受粉したキュウリと何ら変わらないキュウリです。種もできます。しかし、受粉していないキュウリから採取した種は発芽しません。つながりません。甲子園の土や、子供食堂のように、つながっていくには変わらないコンセプトが必要です。しっかりしたコンセプトをもって、喜んでもらえる、楽しんでもらえる「つながり」を持ちましょう。サ-クルにも、会社の地域活動にも!(典)

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