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夏の出来事

今年の夏も暑かった!東京のデ-タですが、真夏日(30℃を超える)が47日、猛暑日(35℃を超える)が3日でした。このデ-タは一昨年より少ないようです。しかし、今年は湿度が高く不快指数日は過去最高の日数だったようです。思い出しますが、学生時代、電車にはエアコンは付いていなくて、天井に大きな扇風機がゆっくり回っていました。時々やって来る冷房車に乗れた時には「今日はついているゾー」と思ったものです。また地下鉄は冷房設備の設置は無理であると言われ、窓を全開にして走っていました。以前は今年程暑くなかったのでしょうか?それとも根性があったのでしょうか?

その暑い中8月23日、富士総合火力演習に行って来ました。この演習は陸上自衛隊の富士駐屯地が、国内最大の規模で行う実践さながらの演習です。私も4年前から高校時代の友人数人と見学しています。今年は最新鋭の10式戦車・F-2戦闘機・P-3C哨戒機・戦闘ヘリコプタ-・88式地対艦誘導弾と、普段目にする事の出来ない国防機器が実弾を使用しての訓練を披露してくれました。男子自衛隊員のキビキビした行動、女性自衛隊員の広報活動を見ていると、社員教育に一週間入隊体験をする会社がある事は理解できました。彼等は日本という大きな器を守り、災害時に地域の復興に駆け付けてくれる、有り難い事です。見学しながら小同窓会となりました。毎年御殿場にホテルを予約して過ぎた日の青春時代を語り合っています。その中の一人に高校時代3年間同じクラスで私より2歳年上の友人がいます。彼は国立大学の工学部を卒業して大手電機メ-カ-の東芝の技術開発部に就職しました。結婚後奥さんの実家の司法書士会社を継ぐために会社に勤めながら猛勉強をして、約2年半で司法書士試験に合格しました。三重県で120名受験して2名の合格でした。彼の専門分野とは別のジャンルに挑戦して成し遂げていく、挑戦の器には驚かされます。口数の少ない彼は「たいした事無いよ」と謙遜しながら、私に「お前の方が凄い」と労わってくれます。私なら「大変だった」と本音を口にしますが、彼は愚痴も言わず黙々と1つ1つ挑戦しています。子供3人の内1人は後継者に、他の2人は医師と会社員ですが、これからは親としてそれぞれを一人前にする事に挑戦すると言っていました。昔から多くを教わった友人に会い、負けていられないなと心に奮起する一日でした。

御殿場の行き帰り用に以前買ってあった本を持って行きました。題名は「俺は中小企業のおやじ」スズキ株式会社代表取締役会長兼社長の鈴木修氏の本です。1950年代スズキは軽自動車やオートバイメ-カ-の町工場でした。しかし、今やハンガリ-・アメリカに現地生産工場を持ち「小さな市場でもいいから一番になりたい」と83年にインドに進出しました。インドでのスズキの子会社、マルチ・スズキは国内のトップメ-カ-となり、06年にはインドで2ヶ所目のマネサ-ル工場も稼働して「小さな市場」どころか人口12億人の発展著しい国の巨大自動車市場を制したのです。本には、インドでは習慣の違いから、なかなか日本流を受け入れてもらえなくて苦労した事や、危機に直面した時、鈴木氏がとった行動が、事細かく記されています。岐阜県に生まれて、中央の法科を卒業して、銀行勤務から鈴木自動車(現スズキ)に入社して、婿養子になり、専務・社長・会長・会長兼社長と奔走、専門違いの工場現場に赴き、一心不乱に改革・改革と歩んできた人生道が書かれています。

GMとの提携の記者会見では、記者の「スズキはGMに飲み込まれてしまうのではないか」という質問に「GMは大きな鯨です。一方スズキはメダカより小さな蚊のような存在です。メダカなら鯨に飲み込まれますが小さな蚊なら、いざというときに空高く舞い上がり飛んでいきます」とユニ-クな答弁で返しました。スズキを今の会社にまで成長させた鈴木氏の、人間としての大きな大きな器を感じた本でした。是非とも皆さんに読んで頂きたい本です。印象に残った言葉は「俺は先見の明があったわけではなく、勢いに任せて、理性を失わず突っ走ったらうまくいった」です。動いていると「一期一会」と「運」は巡って来るということでしょうか。

イソップ物語だったと思います。神様が動物と人間を作った時、ある動物には強い力を、ある動物には速い足を、ある動物には空を飛ぶ翼を与えました。何も貰えない人間が神様に抗議をすると、神様は人間に向かって「お前には最も強い理性の力と心の器を授けたのが分からないのか」と諭したそうです。

人間の器・人間の理性・人間の活力を教えてくれた8月でした。 (典)