どっちかな?

 あなたはどっちを選びますか?「いま1万円もらえる」「3年後に3万円もらえる」多くの人は、「いま1万円もらえる」方を選ぶでしょう。人は遠い将来よりも目の前のことを意識して判断を下します。先の話は不確実な面が多いため、現状の1万円をGetした方が得だと思います。では、「いま1万円を取られる」と「3年後に3万円を取られる」どちらを選びますか?多くの人が、3年後3万円を取られる方を選びます。3年先には現状の3倍の出費となり、今なら1万円の出費で済むため、実経済では痛みも少ないはずです。しかし、目先の事に意識がいってしまい「いま1万円を払うのは嫌だ」と思うのです。よく似た例題ですが、全く反対の心理が働いています。何故でしょう。前例では、人間の損得勘定の心理は、近視的になりやすいので目の前の1万円を取ります。後例では、人間は得をした時より損をした時の方が心にダメ-ジを受けます。千円を拾った時より千円を落とした時の方が、いつまでも心に残るものです。損をするケ-スでは特に近視眼的で不合理な判断をしてしまうのです。今までに述べたのは心理学ですが、この様に実例を上げて経済を研究するのが「行動経済学」です。経済学の理論は、その合理性を重視し、いかに行動すべきかを示すことを目的とする色が濃いですが、行動経済学は実験と観察的事実を元に、実験結果・観察結果を説明することを主な目的にしています。この行動経済学が急速に注目されたのは、2002年心理学者のダニエル・カ-ネマンがノ-ベル経済学賞を受賞してからです。それ以来、百貨店・小売業等のサ-ビス業界が欠かせない商法として取り入れました。人間は損得勘定で生きていて、とくに損をしたくない心理が働いています。

 損得を中心に話しましたが、心理が大きく変わる例題もあります。長さがそれぞれ少し違う3本の棒を用意します。別に1本の棒を用意して、見た目で同じ長さのものを選んでもらうことにします。1人で選ぶとほとんどの人が間違えることなく正解を選びます。そこに数人のサクラを用意して、全員で選ぶことにします。サクラの人達は正解でない棒を指差し「これが同じだよね」とか「そうだよ、これが同じ長さだよね」と言います。すると3割強が間違った棒を選んでしまいます。本人は「ちょっとおかしいな」とか「本当はこれでなかった」とか「まわりの人に合わせてしまった」とか言います。まわりの人に気をつかい認知自体が変わってしまったのです。間違っていると思っても言えなかったのです。会社内でもサ-クルの中でもありがちな例です。間違った事でも、同じことを何度も上司に言われるとそれが正解になります。この同調傾向は日本人に多いのかも!

 毎日新聞の朝刊に、蚊を介して人から人へと感染する病原生物マラリアについて面白い記事が掲載されていました。『マラリアは、感染した人の血を蚊が吸うことでその蚊に感染する。さらにその蚊が別の人を刺すことによって、感染を拡大させる。ただし、マラリアは蚊の中でしばらく成長してからでないと、別の人への感染能力を持たない。感染能力のない期間に蚊が吸血することは、マラリアにとっては百害あって一利なしだ。そこで、マラリアは人に感染する準備が整うまで蚊を操り、吸血行動を抑え込んでしまう。感染準備が整ったところで蚊に吸血を促し、人へ感染する。次に、今度はなんと、感染者の体が蚊を引き寄せやすいように、人の体質を変えてしまうのだ。このように、蚊と人間の両方を操ることで、毎年2億人近い患者を出す感染症として悪名をとどろかせている。厄介な存在だが、人間の体質や昆虫を操る方法は、医療や害虫管理に役立つヒントを与えてくれる可能性を秘めている』(新聞原文)

 マラリアは蚊を操りながら感染を拡大しています。悪名高いけれど学ぶところもあります。行動経済学の損得勘定・服従実験・同調実験。多くの企業で行動経済学を自社のビジネスに活かす研究がなされています。経営者や上に立つ人は知識として必要なことです。(昨年oiron通信11月号サンクコスト行動経済学です。)(典)

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