顧みる

 あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

 4年前から年賀状に「今年の心」と題して目標を記しています。昨年は「潤う」でした。広辞苑によりますと、潤うは、みずみずしくなる、ゆとりが出る、豊かになると書いてありました。省みれば、大病の後、心にゆとりが出来た年でもあり、多くの本にも目を通し知識が豊かになった年でもありました。1年の計が達成された年でもありました。今年の年賀状の、今年の心には「顧みる」を選んでみました。70年を生きてきて、現職に入って44年目になります。設立当時は、必要悪と言われ、銀行の融資もままならない業界でした。その後、認知されましたが、今は少子化が進行してきました。大手塾、中堅塾は合併を繰り返し、大資本の別業種の会社に吸収されています。零細塾においても、倒産、廃業する塾もあります。経営知識のない経営者は、今年も失脚することになるでしょう。しかし、新しく起業する塾者もいます。収益を出し、塾生を増やしている塾もあります。よく「負けには負けの方程式が有り、勝ちには勝ちの方程式は無い」と言われる通り、衰退する塾は、同じ失敗をしています。今年は、経営者の1人として、もう一度、44年間の会社経営と自分自身の行動経過を顧みて、良い事項をふるいに掛けようと思い、「顧みる」を今年の心にしました。

 イギリスの政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンは、人間の進歩の追求としてパーキンソンの法則を発表しています。パーキンソンの法則は、第1の法則と、第2の法則に分かれています。第1の法則は、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。人間は切羽詰まるまで、楽な方、楽な方に身を委ねるという、弱さを見事に言い当てています。例題としてよく使われているのが、学生時代の夏休みです。7月に休みに入りますが、多くの生徒は、出題された宿題には手を付けません。8月に入って気には留めますがまだ手を付けません。8月も後半になり、慌てて宿題に取り掛かり、結局ギリギリまで着手できなかったという結果に終わります。夏休み前は、宿題を7月末までに早めに終わらせて、有意義な夏休みを過ごす計画を立てても、ひとたび時間的な余裕を認識してしまうと、気分の乗らないような面倒な事は先送りしてしまい、予め定められた時間で仕事をしてしまうのです。この人間の弱さを克服するには、本来のデッドラインと自分自身のデッドラインの区別をつける事です。本来のデッドラインとは、8月31日であり、自分自身のデッドラインは、夏休み前にたてた7月31日です。多くの人は本来のデッドラインしか見ず、自分自身のデッドラインを強く認識しません。自分自身のデッドラインを早めに設定し、限定された時間内にプレッシャーを感じながら仕事をした方が、集中力を高め、成果物の質を高めることがあります。

 職場で、いつも定時に帰る人と慢性的に残業する人がいます。定時に帰る人は自分のデッドラインを終業時に設定していて、慢性的に残業する人は仕事の量をデッドラインに決めているから残業することになるのです。また、上司から、1週間で仕上げる原稿を頼まれたとします。しかし、次の日同じ上司から「申し訳ないが、先の原稿を3日間で仕上げてくれ」と言われると、一時的には頭が混乱しますが、直ぐ取り掛かり3日で仕上げ、クオリティが高くビックリした経験をした人もいるでしょう。「火事場のバカ力」とも言いますが、本来のデッドラインと、自分自身のデッドラインが一致し、思わぬ力と、クオリティが発揮されました。時間がないという事は逆にメリットになる事もあります。これがパ-キンソンの第2の法則です。極端に言えば、しなければならない仕事の量と、その完成のために与えられた時間は、あまり関係がなく、それぞれの仕事にあらかじめ締め切りさえ作っておけば、仕事は設定した締め切りに終了するということです。パーキンソンの法則は、自分自身のデッドラインをいかに設けるかです。

 2017年はこの法則を基軸に「顧みる」日々を過ごして行きます。(典)           

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