アリとキリギリス

 アリとキリギリスは我々が子供の頃、イソップの寓話のひとつとして、目にも、耳にもしました。Oironの読者の方は、あらすじについてはご存知と思いますが、昔と現在では内容が少し異なっているようです。昨今、イソップ寓話を読む生徒も少ないのであらすじを記します。

 暑い夏の間、アリ達は餌がなく活動できない冬の食糧を蓄えるために汗して働き続けています。キリギリスは自慢の羽で、バイオリンのごとく弾きながら歌を歌って過ごしています。やがて、冬が来て、キリギリスは食べ物が見つからず、アリ達に食べ物を分けてもらおうとしたのですが拒否され、飢えて死んでしまいます。これが昭和版の物語ですが、キリギリスが飢え死ぬのは残酷だというので、アリは食べ物を与え、一言諭します。「私達は、夏にせっせっと働いている時あなたに笑われました。遊び呆けて何の備えもしないから、あなたは今ひもじい思いをしているのですよ。」それを機にキリギリスは心を入れ替えて、働くようになりました。(平成版)アリは働き者の代名詞として語られていましたが、昆虫の研究で有名な、北海道大学大学院の長谷川教授が面白い研究結果を発表しました。アリの集団の中には殆ど働かず、餌から離れて、何をするでもなく、そのあたりをうろうろしているアリが2~3割存在し、それらの「怠けアリ」を全て集団から取り除くと、今度は別の2~3割が働かないアリに変貌します。同じ事を何度行っても結果は同じ、常時2~3割のアリは怠けアリになっていました。しかし、長いスパンでアリを観察すると、働きアリが疲れて休んだ時、怠けていたアリが代わりに働き始めました。一斉にすべてのアリが働くよりも、生産効率は下がるものの、働かないアリがいた方が組織として長く存続できるそうです。教授は「人間の組織にも当てはまる部分があり、会社で働かないと思われている人も、ピンチになれば活躍する可能性がある。」と述べています。昭和の時代なら、確かに余分な人材を抱えていられました。時間もゆっくり流れていました。新入社員研修も3ヶ月~5ヶ月とっていましたが、バブルが弾けて、平成に入ると、新入社員研修は4月1日の入社式前に終了、即戦力の社員を抱えるようになりました。余分な人材は抱えられません。以前、企業の人材募集には学閥があり、東大・慶應・早稲田などは、一流企業の就職に有利な大学と言われていましたが、近年大きな変化が見られようになりました。2004年に開学した国際教養大学です。秋田県の交通の不便な地方に在りますが、一貫して少人数教育を徹底しています。1クラスの受講数は15名が基本で、教員と学生のコミュニケーションを取り、学生が自ら考え、意見を主張できる能力を養う大学です。大学が生徒に課す厳しい学業基準は、1年間は海外の提携校で過ごし、友人ブレ-ンを作り、世界を舞台に活躍できる国際的なセンスを身に着け、自律心、積極性、自信、困難を乗り越える逞しさを身に着けることです。全寮制で、小さな大学ながら大きな特徴があります。4年で卒業できる生徒は入学時の半分以下です。授業は英語で、海外からの留学生も多く、上場大企業の人事担当者は将来の会社の幹部候補学生を射止めるために秋田まで足を運んでいます。即戦力の人材獲得です。

 アイリスオオヤマという会社をTV等で聞いた事があると思います。社員数は4,000人で、年間50回の新商品の会議が開催されています。プレゼンテ-ションに上がる商品は年間1万5千点、その中で1,000点の新商品が作られ世に出ています。プレゼンテ-ションに出席するのは新入社員でも良いのですが、45分で簡潔に発表する事が義務付けられています。アイデアが勝負の会社です。会議の多い会社ですが、「議論の飛交わない会議は会議でない。結論の出ない会議は会議ではない。」がコンセプトです。昨年一時期TVでLED電球を宣伝していました。その期間、どこよりも安く、種類も多かったのですが、現在はコマ-シャルに出ていません。LED電球は売りつくした。短期決戦が勝負です。平成はアイデア勝負の全員働きアリの時代です。もちろん我が社も!(典)

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